雛人形で飾られる犬筥(いぬばこ)とは?|雛人形・五月人形・浮世人形なら真多呂人形~大正8年創業~

真多呂人形のコラム

雛人形で飾られる犬筥(いぬばこ)とは?

張り子の犬の雛道具

雛人形と一緒に飾るための、様々なミニチュアサイズの道具類を
「雛道具」と呼びます。
雛道具にはたくさんの種類があり、それぞれに謂われや意味が込められていますが、
その中に、犬をかたどった不思議な小箱があります。
これは「犬筥(いぬばこ)」という張り子で作られた箱で、
雌雄で一対となっています。
生き物を模したこの品は、貝桶と共に雛道具の中でも非常に特徴のある
アイテムと言えます。
最近では、焼き物で作られたものも多くなっています。

狛犬から子どもの守り神へ

犬は古くから、人間を厄災から守ると信じられていたため、
その姿を写すことで魔除けや厄除けの象徴とすることが行なわれていました。
神社の入り口にある恐ろしげな顔の狛犬は、
まさに魔除けのための番犬という感じですが、
子どもを守るという役割が定着するにつれて、
次第に人間の子どものようなかわいらしい顔に代わっていったようです。
また、犬はお産が軽く、たくさんの仔を産むことから、
安産の守り神としても知られています。
犬筥は、江戸時代には武家の嫁入り道具として調える習慣ができ、
上流家庭では産室や子どもの寝室などに置いてお守りとしたほか、
婚礼の際に用いられるなど、日頃の生活に密着したものであったようです。
後に民間に広まった、お宮参りの犬張子の原型になったとも言われています。

雌雄一対の犬が幸せを見守る

貝桶と共に、犬筥は女の子の健やかな成長と幸福を願う雛飾りとして、
特に華やかな存在感のある品です。
雌雄一対の犬筥は、雄犬の中にお守りを、
雌犬の中に化粧道具を入れたとも言われますが、
もともとは天皇を厄災から守る守護獣として
玉座の脇に据えられた狛犬がルーツであることを考えると
内裏雛の横に飾られることはごく自然な流れと言えるでしょう。
ちなみに犬筥は、ほかに「御伽犬(おとぎいぬ)」、「宿直犬(とのいいぬ)」、
「狗筥・犬筐(いぬばこ)」などの別名があります。