女雛の髪飾りについて
女雛の髪型である大垂髪(おすべらかし)にて使われる金属製の髪かざりのことを、
釵子(さいし)もしくは平額(ひらびたい)といいます。
業界用語では玉櫛(たまぐし)とも呼ばれるようです。
釵子(さいし)
もともとはU字状の金具の名称だったのですが、
江戸時代以降は平額が釵子と呼ばれるようになり、
場合によっては額櫛までをひっくるめた名称にもなっています。
そのため、従来の釵子のことを簪(かんざし)と呼んで区別するようになりました。
※簪(かんざし)の由来は髪挿しから「かんざし」となったとされています。
神事の際には、平額へ心葉(こころば)と呼ばれる造花を立てると同時に、
左右に日陰糸(ひかげのいと)を垂らします。日陰糸(ひかげのいと)は、
白絹を蜷(「にな」もしくは「みな」)結びに編み込んだものです。
※蜷結びは、公家の上袴や几帳の装飾で用いられた飾り結びです。
★髪上げの具
釵子(さいし)や平額や丸かもじのことをいいます。
※丸かもじは、平額を取り付けることを目的として、前頭部に丸めて添えたものです。
五衣唐衣裳の正装の際に使用するものとされています。
大垂髪(おすべらかし)
女雛の髪型で使われている大垂髪(おすべらかし)は、前髪をとらないようにして、
左右ふたつに髪を分けた後に、鬢(びん)を横に張り出すように結います。
そして後ろ髪は水引や絵元結を使って束ねます。最後に前髪に丸かもじを添え、
釵子と額櫛を挿して完成です。
★宝髻(ほうけい)
大垂髪(おすべらかし)に鍍金(金メッキ)製の平額を取り付けて、
釵子(さいし)で留めたものです。
時代ごとの変遷
★平安時代
この時代には、裾を引くほどの長さであることと、
豊かな艶のある黒髪が理想とされていました。
成人の際に行われる、鬢批ぎ(びんそぎ)と呼ばれた儀式にて、
頬にかかる髪の一部を、目の下30センチ程度に切る習慣もあったとされています。
★室町時代
この時代には、四角く額を出して髢(かもじ)をつなぎ、
背中でいくつか作った結び目を垂らしていました。
★江戸時代
杓子のように鬢を張る結髪式が用いられるようになりました。