雛人形と婚期の関係|雛人形・五月人形・浮世人形なら真多呂人形~大正8年創業~

真多呂人形のコラム

雛人形と婚期の関係

なぜ「嫁(い)き遅れる」の?

「ひなまつりが終わったら、お雛様を早く片付けないとお嫁に行き遅れるのよ!」
と母親から言われて育った人は、少なくないでしょう。
結論から言って、雛人形の片付けが遅れようが、婚期とは何の関係もありません。
従って、俗説や迷信の類に過ぎないと言ってよいので、どうぞご安心ください。
しかし、お人形の片付けが遅いことに、婚期を逃すことが重ねられたことは、
行儀作法のしつけのため、あるいは人形を大切に扱う心を育むためなど、
様々な説があるのも事実です。

仮説その1・厄災を祓う

雛人形のルーツは、穢れや厄災を移して流す人形(ひとがた)で、
現在のひなまつりは長い間にそれらの厄除けの風習が
様々に混ざって成立したものです。
そのため、災いの身代わりとなったものは早く片付けて、
身近な場所から遠ざけたほうが望ましいとする考えがあります。
そこから、「早く片付けるべし」という習慣が広まった可能性があります。

仮説その2・ルーズさを戒める躾の観点

お人形をしまうのは、意外に手間がかかって面倒な作業です。
しかし、役割を終えたものをいつまでも出しっぱなしにしておくと、
いかにも無精でだらしがない印象を与えます。
女性の場合はとりわけ、きちんと片づけができないと、
お嫁に行ってからも困ることが多いもの。
そこで、躾の意味で「片付け」をさせる動機付けとして
「婚期」が強調されていったのでしょう。

仮説その3・「片づく=嫁ぐ」の掛け言葉

お嫁に行くことを、「片づく」と表現することがあります。
その昔はよく、「うちの娘もやっと片づきまして…」などと言えば、
世間体が立って親もホッとひと安心していることが察せられたものです。
雛人形は、まさに女性の幸せな結婚をストレートに象徴するものでもあるため、
自然に娘の婚期と重ねられ、「早く片づく=早く嫁に行く」
という謂われにつながっていったと考えられます。
また、早い時期に飾り始めると、結婚が早く決まる(早く嫁に出す)
という場合も同じ気持ちが背景にあります。

雛人形を愛でる繊細な心を大切に

つい最近まで、普通の女性が安泰な人生を過ごすには、
結婚以外に選択肢がありませんでした。
そんな時代であれば、女性にとって「婚期を逃す」ことは何よりも避けたい、
恐ろしい「災い」ですらあったと想像できます。
しかし、幸福を祈願するお雛様が女性を脅かすことなど、
本来あるはずがないのです。
雛人形の美しさを愛でる心や、人形を大切に扱う所作、しきたりを重んじる意識、
そして行事が済んだらていねいにしまうなど、
ひなまつりは非常に繊細な文化です。
この伝統を保ち、未来に伝えていくことこそ、
幸せな人生につながる姿勢なのではないでしょうか。