押し絵のくくり雛とは?|雛人形・五月人形・浮世人形なら真多呂人形~大正8年創業~

真多呂人形のコラム

押し絵のくくり雛とは?

奥州に伝わる「くくり雛」のルーツと歴史

岩手県奥州市水沢区には、くくり雛と呼ばれる伝統的な雛人形があります。
押し絵と同じ技法で作られた雛人形で、
厚紙で作った人の形を美しい布でくるみ、中に綿を詰めたものです。
一般的な雛人形に比べると安定性に欠けるため、
後ろに串などを通し、木の台座に刺すことで飾ることができます。
水沢地方では、綿で布をくるむことを「くくる」と言い、
そこから「くくり雛」と呼ぶようになりました。
旧家に伝わる資料の中に、1862年の年号が記された人形が出てきたことにより、
江戸時代に発祥したことがわかりました。
その後も旧家に保存されていた人形が発見されたことで、
起源は江戸時代中期頃までさかのぼることがわかってきました。
くくり雛が庶民の間に広まったのは明治に入ってからで、
一人の画家が京都の博覧会に出品された押し絵の技法を覚え、
女子教育のために広めたと伝えられています。
雛人形作りは昭和初期まで続いていましたが、その後いったん衰退します。

「奥州水沢くくり雛まつり」で文化を伝承

平成9年、くくり雛保存会が設立されると、保存会を中心として、
水沢の雛人形文化を残すための活動が続けられています。
早春の城下町水沢に春を告げる「奥州水沢くくり雛まつり」は、
岩手県奥州市まちなか交流館をメイン会場に、
奥州市武家住宅資料館、みずさわ観光物産センターや旧家、商店街などで、
毎年2月末から3月初旬にかけての5日間行われるひなまつりです。
内裏雛や三人官女、五人囃子などのほか、
歴史上の人物や歌舞伎、浄瑠璃、おとぎ話を題材にした人形が展示されます。
ひなまつり開催期間中は雛人形の展示だけでなく、
くくり雛作り体験コーナーなどのイベントも行われています。
制作する雛人形は日によって違うため、
好きな人形を作る日に参加を申し込むとよいでしょう。
水沢区内にいくつかある会場は水沢駅から歩いて行ける距離にあるので、
会場をゆっくり散策しながら、約800体のひな人形を鑑賞することができます。
どの人形も個性あふれる美しい顔で、来訪者を歓迎してくれます。